賃上げしても手取りが増えないのはなぜか — 数字で確かめる
春闘の賃上げ率は近年5%前後まで上がりました。それでも「手取りが増えた気がしない」という声は多く残ります。額面の増加が手元のお金にそのまま届かない理由を、3つの要因に分けて確かめます。
要因1: 物価が額面より速く上がった
賃金が5%上がっても、同じ期間に物価が同じだけ上がれば、買えるモノの量は変わりません。実質賃金(物価で割り戻した賃金)は、2022年以降の物価上昇局面で長くマイナスが続きました。額面が増えても、生活の実感が伴いにくいのはこのためです。
要因2: 社会保険料の負担が増えた
厚生年金の保険料率は2017年に18.3%(労使折半で本人9.15%)まで段階的に引き上げられ、その水準が続いています。健康保険料率も協会けんぽで緩やかに上昇してきました。さらに2026年度からは子ども・子育て支援金が加わります。額面が増えると、これらの保険料も額面に応じて増えるため、増えた分の一部が保険料に回ります。
要因3: 税は累進で増える
所得税は課税所得が増えるほど高い税率がかかる超過累進です。住民税も所得割があります。賃上げで額面が上がると、増えた部分には以前より高い税率がかかることがあり、手取りの増え方は額面の増え方より小さくなります。
数字で見ると
たとえば額面が同じでも、社会保険料率と物価の上昇だけで、手取りの実質的な価値は年々目減りします。自分の額面でどのくらい変わるかは、手取り実質水準診断 で概算を確かめられます。年収・居住地・扶養人数の3項目を入れるだけで、2026年の概算手取りと、その実質価値が過去の何年の水準に近いかを試算します。
まとめ
- 賃上げが物価上昇に追いつかないと、実質の手取りは増えにくい
- 社会保険料率の上昇が、増えた額面の一部を吸収する
- 税は累進のため、額面の増加ほど手取りは増えない
本記事の数値・説明は公開統計に基づく一般的な概算であり、個別の税務助言ではありません。